ウサギノオト

ぼんやりした考えを、コネコネしてみる。

「家族と社会が壊れるとき」感想

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NHKで放送された、ケン・ローチ監督と是枝裕和監督の対談をまとめて、加筆された本。

たしかに、家族と社会を中心に映画作品で扱うお二人のようですから、こうしたタイトルになったのでしょうけれども、何度か読み直して本書のタイトルは「2人の映画製作論」にした方が、ずっと購入者に内容がわかりやすかったのではないかと思いました。(まあ売れるオモシロタイトルではないでしょうけれども)

 

英国の家族や社会について社会主義者からの視点で語るローチ監督の文章は、どんどん加速していくグローバルな資本主義社会で、立ち止まって考え直す機会をもたらすもので、映画も観てみたいです。

 

是枝裕和監督はローチ監督を偉大な監督と書きつつ、自分はローチ監督にはなれないのだと明言していて、それは生活している国や思想の違い、そしてそれぞれの人生があるからということなのかもしれません。

ローチ監督も、是枝裕和監督の手法に興味を持って話を聞いていますが、映画を撮るなら自分で自分の先生になる必要があると言い切っています。

誰かの教えに従っているだけでは、作品は作れないよと読者に言い聞かせたいようです。

 

しかし、おふたりは映画監督であります。

結局映画には何ができるのか、作品に通底するコンセプトは何なのかは、この本で端的に書き出されていました。

映画撮影の具体的な記述としては、映画作品の撮影をどう進めるか、撮影カメラをどこに置くかなどなど。お互いに似た手法がある箇所が興味深かったです。

 

是枝裕和監督は本書では、日本で生活して感じる問題に向かっているのでしょう。

権力から自由であること、公共の崩壊が進んでいること、功利主義が強まっていることは、監督業や教壇に立つ経験から導かれた考えが書かれている印象です。

 

私が本書を読みたいと思ったのは、やはり家族と社会というタイトルに気を引かれたからです。内容としては触れられていますが、そこが中心かというと少し弱い内容であるように感じました。

本書の中身なっている創作論は、これまで様々な創作活動者の著作で読んだ内容も多いですが、要点がはっきりしていて、わかりやすい言葉を選んで書かれています。

 

ローチ監督の言葉「自分が自分自身の先生になる」ところで、私は足踏みしている状態が続いていると感じています。

自分がやるべきは表象をみていくことも大切ですが、作品を作り、作品を見てゆくことだと考えるようになってきています。

 

 

家族と社会が壊れるとき (NHK出版新書)

家族と社会が壊れるとき (NHK出版新書)