ウサギノオト

ぼんやりした考えを、コネコネしてみる。

映画「空母いぶき」感想

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自分の知っている物語の形式と少し違っていました。具体的に書きますと、登場人物の成長は極めて控えめだったのです。まあ自衛官や政治家の喜怒哀楽が大きい訳がないところにリアルさがあるのだと思いました。

物語が進んでいきますと空母いぶきの艦長と副長の溝が埋まるとか、総理の心の動きが感じ取れるようになっていきます。

そうした物語による成長や変化は、むしろ映画を観た自分の内部で起こっていたような気がします。

 

作品中では普通の人生が戦争で脅かされない日々が、隣接国家の少しの情勢変化で大きく変わりうる物語が描かれています。

 

今は新型コロナウイルス感染症の脅威が生活の中にあって、問題解決に長期間を要する状態。国民は政治や行政に生殺与奪の権利を握られている形。

しかし私には政治も行政も信頼がおける存在ではなく、また政治や行政の悪いところをやたらと強調しているマスメディアにもうんざりします。ただしそういう悪い面があっても良い面もあるはずで、どんな理想的政府が誕生しても影が無くなることはないでしょうけれど。

現況は政府から国民の命をどう守るかというメッセージが見えないまま、経済を回し税金を集めるために労働者を働かせているようにも感じますから、もう「まん延防止等重点措置」も効果を持たないのではないかとすら思います。破滅的なことになるんじゃないかと。

 

話が逸れました。

「空母いぶき」に登場する垂水総理の最後のセリフに、作品の思いが詰まっていると感じました。日本を戦争状態にしないために判断を重ねていく姿に通底していた、「普通の人の人生を守っていく」という内容のセリフです。

今日本で戦争は起こってないけれど、世界中で新型コロナウイルス感染症は拡大し、誰もが「普通の人生」を見つけることの難しさに息を詰まらせているように感じます。しかし政治や政府が変われば良くなるという次元の話でもないと思います。もっと広範囲の、世界中で変化が起こっていく必要を感じます。一方で世界中に不寛容がもっと速く浸透している印象があります。

この映画は2019年公開でしたけれど当時の問題意識は、2021年になりもっと複雑に入り組んだものに変化していて、映画や物語で単純化し、「こういう考えを持って行くのが良い」と伝えることは、できなくなってきている気がしました。

 

CGがきれいで、物語の緊迫感を上手く演出していて、物語に引き込まれた映画でしたが、見終わった後に現実を考えますと、何ともむなしい気分になりました。

 

空母いぶき

空母いぶき

  • 発売日: 2019/10/28
  • メディア: Prime Video