ウサギノオト

ぼんやりした考えを、コネコネしてみる。

若林正恭『社会人大学人見知り学部卒業見込み』

若林さんの2010~2014年の人生の思考ログを重ねたエッセイであった。

これは自意識過剰な自分を衆目に晒すという、自虐的で、本人は恥ずかしいと感じられているのではないか、辛いのではないのかと思わせる。

でもクスっと笑わせるネタは、やっぱりプロのそれで、時折泣ける話が挟み込まれる。

 

 

若林さんが本業で忙しい中でも、エッセイの連載を続けたのは、お金がもらえるということもあっただろうが、この本には書かざるを得なかった情念を感じる。

私はオードリーのコントも活躍もよく知っていると言えないが、読後にもっと生の声、たとえばラジオ番組を聞きたいなと思った。

 

この本を読んで、ケラケラ笑っていられる人は幸せである。もっとも、そういう人は手にとっても、すぐ投げてしまうかもしれないが。

お笑いのプロでありながらも、「自意識過剰」と「大人になれない自分」を綴った4年間の思考ログは、読者を刺殺しはしないが、チクチクと針が刺さるところはたくさんあった。

若林さん自身が、自分で勉強したこと、番組共演者、先輩後輩やスタッフなどの関係者から、直接見聞きした経験を自分の未熟さと照らし合わせて反省するとき、読者である自分もまた、大人になりきれない未熟な自分があぶり出されるからだろう。

特に「真社会人」あたりから、私は手が止まることが多かった。

 

この本を読むことで救われる人は、たくさんいるんじゃないだろうか。

何より若林さんが書かざるを得なかった気持ちが、たくさん含まれている。

そして、若林さんの自意識に縛られながら手足をバタバタさせた足跡と、その結果見えた風景が、暗闇にいる私に差し込んでくる光だ。

結果が出ようが出まいが、特別な才能がないなら、自己ベストを更新し続けるしか無い。

トッププロとして4年間の経験したまとめの言葉が、とても力強い。

あとがきに書かれていた、小さなことにも感動・感謝するということ。

若林さんの人間不信だった部分は、そのアンテナ感度が高まることで、自信がうまれることを示しているのだろう。

 

完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫)