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ウサギノオト

ぼんやりした考えを、コネコネしてみる。

M×U ― 砂を折る ― Vol.3

コラボ 写真 短歌

場所は横浜の根岸にある旧柳下邸。時期は正月前だったか後だったか。横須賀から自転車で、寒い中国道沿いに走って行って、缶コーヒーがおいしかったことを覚えている。
室内で写真を撮るなら受付で一言伝える必要があるが、商用でなけれな無料で写真が撮れる。横浜山手にある洋館と同じで、さまざまな調度品が保存されていて、撮影に邪魔なロープが張り巡らされていることもないので、撮影の自由度は高い。

 

お正月時期だった旧柳下邸では、テーブルや机に飾られている花や小物はお正月をイメージさせる物で、住宅街にあることもあり、見に来ているお客さんもほとんどおらず、古き良き静かなお正月を感じられた。

 

しかし、五右衛門風呂のわきに置かれたブリキの金魚のおもちゃは、私の中ではお正月にすぐに直結しなかった。後で調べてみると、台湾などでは旧正月に縁起の良い金魚を飾る風習があるらしく、その名残なのかもしれない。

部屋の単調な色合いの中に、鮮やかな赤い金魚のおもちゃはとても目を引き、曇りガラスから入ってくる冬のやわらかな光に照らされていて、これを撮らないことはできなかった。

 

うささんは、今の季節に合う形で短歌を詠まれた。
夏の間、水遊びの相手をつとめたブリキの金魚(きんとと)も、秋に入る時期にお役ごめんになるのかもしれない。
そんな「きんとと」は引き出しの中に帰るのではなく、深まりゆく秋の空へと自由に泳ぎだしていってほしいというのは、鰭(ひれ)が乾くまでの少しの時間、夏との別れが寂しい気持ちを抱く時間はまだあること。あるいは来年は遊んでいた子どもも大きくなって、ブリキの「きんとと」には興味を示さないかもしれないという、センチメンタルな気持ちが広がっていくような印象を受けた。