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ウサギノオト

ぼんやりした考えを、コネコネしてみる。

マクロな微生物の世界

科学

環境中に生息する微生物研究は、研究室から始まるのではなく、調べたい環境のサンプル、つまり土なり水などを採取するために、屋外に出かけることから始まる。
地球上の環境なら、一つの場所にさまざまな微生物種が混在しているので、まず微生物群から単一の微生物種に分けるという作業を行う。微生物の分離や、単離と呼ばれている作業だ。
分離しても外見では素性の判断はつかないので、微生物が何を餌にするかや、細胞膜の成分で判定するが、最近は簡易な方法で微生物の遺伝子配列から判定することが主流になっている。

 

私が長くした仕事は、微生物の遺伝子配列を解析して、微生物を判定する仕事だった。
どんな環境を調べていたかというと、深海の海水や、深海の海底の堆積物(青灰色や茶色の泥みたいなも)だった。
一回の研究テーマで、長ければ1年半、短くても半年は繰り返す実験が続く。

 

息の長い実験が続く中で、楽しい瞬間がいくつかある。その一つが微生物の世界を感じられたときだ。
微生物の世界とは、顕微鏡を覗くようなミクロな世界をイメージされるかもしれない。そちらも楽しいが、環境微生物を調べている微生物の世界は、マクロな世界もある。
例えば、小笠原海溝海底の堆積物から分離した微生物たちの中には、比較的閉じた海域の地中海の海底堆積物や、北極の氷から分離された記録が残っている微生物が混じっていた。

 

夢のある想像をするなら、地球にある海は全体では1つだから、微生物は海流に乗って地中海や北極から、小笠原海溝に流れ着いたのかもしれない。
あるいは逆で、小笠原海溝に生息していた微生物が、向こうに流れて行って見つけられたのかもしれない。
または海に普遍的に存在している微生物種で、たまたま最初に見つかったのが、地中海だったり、北極だったのかもしれない。
いずれにしても、地球全体がひとつの生命圏なのだと思えたのは、面白い世界だった。